帰化申請の要件
普通帰化における帰化申請の条件(帰化要件)は、国籍法第5条で規定されており、法律上の規定では6項目の概要が規定されています。
居住要件:帰化申請の要件
(Ⅰ)引き続き5年以上日本に住所を有すること
国籍法第5条1項1号に規定された帰化申請の条件です。「日本に5年間引き続き住み続けている。」という事だけでなく、申請者は申請内容からして今後も生涯日本に住み続けていくであろうことを法務大臣が客観的に思料(いろいろ考えておもんばかること)できる内容でなくてはなりません。
したがって、特別永住者であっても日本に居住地を継続して維持していたとしても日本と海外を往来し、海外生活が長期に及び生活・仕事の拠点が海外にある方等で、将来的に日本を生活する拠点として客観的に見込めないと判断される場合には、「居住要件」を満たさないと判断されることがありますので注意が必要です。
次に在留資格について説明します、「留学資格」や「就学資格」は、各在留年数で日本に在留していても居住要件の「5年間」に通算されないため計算には含まれない解釈です。
よって、原則としては5年以上日本に居住し「留学資格」「就学資格」以外の在留資格で3年以上経過していることが「居住要件」を満たすとされています。
但し、配偶者や親が日本人の場合その他、留学資格からの変更で直ちに申請できる場合もありますので、以下に緩和要件をまとめます。
以下の場合は要件が緩和されます。
- 日本国民であった者の子(養子を除く。)で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有する者。
- 日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養母を除く。)が日本で生まれた者。
- 引き続き10年以上日本に居所を有する者。
>>詳細については、「帰化とは?永住との違いを解説!」をご参照ください
- 日本国民の配偶者たる外国人で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し、現在も日本に住所を有する者。
- 日本国民の配偶者の外国人で婚姻の日から3年を経過し、引き続き1年以上日本に住所を有する者。
>>詳細については、「帰化とは?永住との違いを解説!」をご参照ください
- 日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有する者。
- 日本国民の養子で引き継続き1年以上日本に住所を有し、かつ縁組の時本国法により未成年であった者。
- 日本国籍を失った者(日本に帰化した後日本の国籍を失った者を除く。)で日本に住所を有する者。
- 日本で生まれ、かつ出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き3年以上日本に住所を有する者。
>>詳細については、「帰化とは?永住との違いを解説!」をご参照ください
能力要件:帰化申請の要件
(Ⅱ)十八歳以上で本国法によって行為能力を有すること
国籍法5条1項2号に規定された帰化申請の条件です。帰化申請は成人しており「法的に単独で有効に法律行為をなし得る能力」を具備されていないと許可されません。
但し、未成年者であっても両親と同時であれば帰化申請をすることができます。なお、十五歳未満の方は法定代理人(基本的に本人の両親)が代わって申請をすることになります。成人年齢(本国法によって行為能力を有する)については、国により違い(例:アメリカ:州ごとに相違、中国十八歳、ネパ-ル十六歳)
がありますので完全な行為能力が付与される年齢も違うので注意が必要です。
各国成年年齢表
素行要件:帰化申請の要件
(Ⅲ)素行が善良であること
国籍法第5条1項13号に規定された帰化申請の条件です。一般の社会通念上、普通でまじめな人であれば充分です。しかし、不許可になる方の多数が、一般的社会通念が欠缺(かけており)しており自分では普通に真面目に暮らしているつもりでも、審査する法務局の観点、すなわち一般的な日本人の視点から考察して「真面目に暮らしているとは言えない。」と判断されています。この素行要件が帰化審査で最も不許可になり易く大事な要件です。具体的には以下に要点を記載しますが、まず、帰化申請内容に虚偽(嘘:うそ)がないことが1番重要です。虚偽の帰化申請は刑法157条1項・同行使罪(公正証書原本不実記載等)が規定されていますから、許可申請時に虚偽申請が発覚しなくても、「許可後」でも発覚した場合は法理上逮捕され許可無効や許可取り消しもあり得ます。今後日本人として生活する中で戸籍請求をしなくてはなりませんから一生時効はありません。
よって、申請者自身が亡くなるまで「虚偽申請」の発覚の恐怖に怯え続けていかなければならなくなりますので充分お気を付けください。
この他にも下記のとおり素行要件は、広範であり総合的判断になりますので自己判断ではなく客観的観点から帰化専門家に相談されることをお勧めします。
また、素行要件は在留資格が特別永住者かどうかによって審査の厳しさが若干変わってくるものもあります。
【前科・犯罪履歴】
前科及び犯罪履歴は、許可の判断をする上で大きな基準となります。犯罪の軽重によって経過年数も異なりますので、ご相談下さい。
Ⅰ.不法入国
不法入国には下記(イ)(ロ)2つのパターンがあります。
(イ)偽造パスポート・在留カードによる不法入国
この場合は重犯罪にあたるので、帰化申請自体が非常に難しいと思料されます。
(ロ)正規パスポート・在留認定許可後(例:技術、人文知識、国際業務)、その就職先に就職しないで、その在留カードで日本に入国を繰り返していた場合
この事案についても立派な入管法違反となりますので、犯罪の軽重により経過年数も異なりますのでご相談ください。
なお、本違反については、家族、本人状況により勤務先それぞれの悔悛(反省)状況を示す「上申書」を添付することが必要不可欠となります。
Ⅱ.不法滞在(オーバーステイ)
オーバーステイについても状況により、帰化申請を控える経過年数が異なります。
(イ)在留特別許可
10年以上の経過が必要
(ロ)(イ)以外の軽微な場合
状況により経過年数も異なるのでご相談ください。
なお、本違反についても、家族、本人状況により勤務先それぞれの悔悛(反省)状況を示す「上申書」を添付することが必要不可欠となります。
【破産歴】
破産に到った経緯にもよりますが、悪質な場合を除き免責決定を受けてから2年程度経過していれば受け付けてくれることが多いです。
【重加算税】
脱税などで重加算税を課せられることがありますが、改めて修正申告をした上で納税をし、その後、一定の期間(3年前後)経過後に申請受理される場合があります。但し、脱税の額、内容にもよりますので、ご相談下さい。
【運転履歴】
素行要件で帰化申請する方の1番該当の多いのがこの運転履歴です。
違反の頻度・時期、行政処分の回数などにより総合的に判断されます。交通違反の回数や内容に関して不安のある方はご相談下さい。
【交通事故】
直近で交通事故を起こした方は、出来るだけ速やかに民事上の示談を結了させて下さい。
【納税状況】
過去1~2年の所得税・住民税が滞納されている場合には、申請前には必ず完納して下さい。
この完納は必須要件ですので早めに完納しましょう。
会社員の方で給与から天引きになっている方は問題ないと思われますが、給与から引き落とされていない方、その業種、個人で確定申告などしている場合は注意が必要です。
年金について
会社経営者の方は、厚生年金の強制適応事業所に該当しますから厚生年金保険に直ちに加入し当該保険料を納付することが必要です。なお、加入漏れについては、①現時点から加入した保険料を納付し、②過去の未納分については直近1年分の国民年金を支払うことが必須です。
また、会社経営者の場合、自分自身や家族が厚生年金ないし国民年金に加入することはもちろんのこと、会社経営者(帰化申請人)で、働く社員も厚生年金や国民年金に加入させることは当然義務となります。
すなわち、帰化申請人である会社経営者の年金加入義務は、自身が会社経営をしている会社から、給料ないし役員報酬を得ているわけですから、帰化申請人の会社で働く従業員の加入義務は当然となるわけです。
したがって、帰化申請人が申請後に帰化申請人の会社で働く従業員が厚生年金などに未加入だったことが発覚した場合には、年金法の義務不履行により、帰化が不許可になることは避けられません。
個人の場合
国民年金の免除申請・納付猶予申請
個人の場合について、特に学生時代など国民年金保険料を納めることが、経済的に厳しいとき管轄の市区町村窓口で申請することで保険料免除や納付猶予してくれる制度があります。この申請には経済的に保険料支払いが難しいことを国に申請することになりますから、保険料の単なる未納状態と比べて、法律に則った対応として「遵法精神」の点に関しては問題がありません。
ただし、現在の年金の支払いに関する帰化の要件は「厚生・国民年金に加入しており、且つ1根に上の年金の支払いがされていること。」となります。したがって、帰化申請時以前に保険料免除や納付猶予の手続きをしていなかった場合には過去の支払状況が問われ場合によっては不許可事由になる可能性が高くなります。
日本年金機構HP→
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150428.html
贈与税について
渡日以後に、本国の両親のいずれかからお金をもらう目的で直接あるいは間接的にお金を受け取った場合(マンションの購入代金なども含む。)には日本の法律により贈与税という税金を申告することになります。したがって贈与税の申告やその納付を怠っている場合には、無申告となり税法違反や無申告加算税が課税されます。
つまり、納税は憲法に定められた国民の義務(帰化申請者は渡日以後の状況が審査される。)なので義務を怠っていた場合には、帰化の不許可事由となるのです。
詳しくは→国税庁贈与税
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/zouyo.htm
【家族の素行について】
身近な親族に暴力団(反社会的勢力を含む)がいる場合には、例え住居が別で生計を分けていても状況によっては不許可になる場合がありますので注意が必要です。よって、暴力団の親族がいるのに許可申請するには、相当明白な(全く係りも、繋がりもない)証明が必要になります。
また、暴力団との係りについては素行要件だけでなく、思想要件(日本憲法遵守条件)の観点からも不許可判断をされますから、自分自身が仮に暴力団構成員であるかどうかだけでなく家族及び親族も調査対象になりますから注意が必要です。
それでは次に、具体例を下記の通り示します。
参考:家族構成の内容
次に家族構成(事実婚など)についても素行要件が大きく関わってくるので注意が必要です。
つまり、帰化申請当事者が愛人関係である当事者およびその家族は素行要件(公序良俗)に反するので、帰化申請自体をすることができません。その家族については、全く帰化申請ができない、ということではなく、その状況によって異なるので、下記に図で解説します。
【事例】
上掲事例の家族の場合、夫であるAと事実婚の愛人Bは素行要件(公序良俗)に反し、帰化申請自体をすることができません。但し、AとBの実子であるCについては、置かれる環境によって帰化申請の要件も変わることになります。
まず、Cが未成年の場合はには、A,Bが帰化申請することができない上に、未成年ですからCが単独でも帰化申請をすることができません。
次に、Cが成年に達した場合には単独で帰化申請ができますが、「学生」であった場合には生計要件で制限を受ける場合があります。最後に、Cが成年に達した上で、A,Bから完全に独立し、単独で生計要件を具備(そなえること)していた場合には、Cは単独で素行要件の制約にかかることなく帰化申請できることになります。
素行要件チェックリスト
上記チェックリストに該当する場合であっても帰化申請が全く出来ないわけではありません。どうしても帰化申請したいが、上記に該当し帰化申請できるかどうか不安であるというお客様は当事務所まで、お気軽にご相談下さい。
生計要件:帰化申請の要件
(Ⅳ)自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること
日本国内で、生計を営むことができるかどうか、というのも許可の要件となっています。
もちろん独力である必要はありません。(例えば配偶者の資力がある、親からの仕送りがある、多額の預貯金がある、など)
現在の資力、収入などを証明となる書類を提出する必要があります。
具体例)
(イ)預金額
会社勤務の場合には、毎月勤務先から給与が入金され、預金がある程度されていれば問題はありません。
※失業中の場合には、再就職のための休職期間中を維持する相当の預金額が必要。かつ、再就職の可能性の高い技術・スキル・経歴も審査対象となる。
(ロ)雇用形態
正社員・契約社員は問題ありません。
派遣社員の場合には、管轄法務局により、勤務期間や条件などが異なる場合があり、注意が必要です。
(ハ)転職
転職後まもない場合や、転職歴が多い場合はご相談ください。
※なお、転職した場合は就労資格証明書を取得することが必要不可欠となります。
国籍要件:帰化申請の要件
(Ⅴ)国籍を有せず、又は日本の国籍によってその国籍を失うべきこと
国籍法第5条1項5号に規定された帰化申請の条件です。日本に帰化することで二重国籍となる場合には帰化することができません。国籍喪失要件、或いは国籍要件とされています。
法律上、帰化によって日本国籍を取得した人は自動的に従前国の国籍を失うことになります。(例:中国籍、米国籍、インド国籍など)
つまり、従前国の国籍を失うことができる人が、この要件を満たすことになります。さらに端的に言えば、従前国の国籍を捨てる意思を有するのか否か、それができなければ帰化によって「日本国籍を、取得することはできない。」ということです。
したがって、日本は重国籍を認めていません。日本と同様に重国籍を認めていない国は比較的多くあります。但し、中国籍の方の場合など国籍法上、二重国籍を認めていないにも関わらず帰化の際に国籍離脱の宣言をしたことの証明書を法務局が求める場合があります。
他に、その国により未成年者は国籍喪失ができない・兵役を終えなければ国籍離脱ができないなど、国籍離脱にあたり時期が大きく異なったり、国籍離脱証明書などに大きな費用が必要になる場合があるので注意が必要です。
思想要件:帰化申請の要件
(Ⅵ)日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと
国籍法第5条1項6号に規定された帰化申請の条件です。憲法遵守要件と例えられることもあります。日本の国権を尊重することは日本人として当然のことです。日本の国権を脅かすような団体に所属していると帰化申請自体ができません。つまり、申請者本人だけでなく申請者が暴力団関係者(暴力団の下部組織やフロント企業など)や右翼関係者と密接な関係にある場合が該当します。また、暴力団関係者だけでなく、傾倒する思想について暴力を含む過度の行動によって社会に対して主張を行う組織と深い関わりがあることは「思想要件上」不許可になります、また、日本政府に対して過度の主張を行い日本の主権を脅かすような外国人団体において中枢となるような地位にある者も帰化申請できません。
国籍法条文外の帰化申請条件(帰化要件)
帰化申請書類完備条件
帰化申請は①収集(添付)する書類と②作成する書類を併せると本国により異なりますが、一般の申請者で約60種類以上(120枚~)特別永住者(在日韓国人)は(200枚以上)会社経営者は(300枚以上)の書類が必要になります。加えて、添付する全ての書類の内容と帰化申請の内容が整合していなければなりません。すなわち、先ず①の全てを収集後に要点の照合(確認)をしながら申請書類の作成を始めることが重要です。帰化申請は、①が揃っていない場合だけでなく、帰化申請で作成する書類の記載内容に「虚偽」や「重大な誤り」があると、当然不許可になります。因みに添付書類の不備は「受付拒否」となりますが、申請書類の記載内容の「虚偽」や「重大な誤り」は受付時点では発覚しませんから、その後「取り下げ」「不許可」という処分になります。また、許可後に明白な虚偽が発覚した場合には(Ⅲ)素行要件記載部分(公正証書原本不実記載等の刑罰)の結果となりますので再三の注意が必要です。したがって、国籍を替える重要な書類作成は慎重かつ緻密に行なわなければなりません。
国籍法条文外の帰化申請条件(帰化要件)
日本語要件
必ずしも専門用語まで覚える必要はありませんが、普通の会話において不自由なく意思疎通ができ、一般的な日本語の文章の読み書きができるレベルが必要です。
一般的に10歳(小学校2~3年生)程度のレベルだと言われていますが、申請者が条件を満たしているかどうかは、慎重な見極めが必要です。
もともと就学や留学の在留資格で来日し、その後技術・人文知識・国際業務などの就労資格に変更されている方などは、日本検定1級(N1)や2級(N2)を取得されている方も多数いらっしゃいますが、検定を取得していなくても十分要件を満たす方もいます。
つまり、帰化申請時点で、実質的な日本語の「読み」「書き」「会話」の能力が求められます。
平均的にご依頼者の方は「会話」は比較的問題ありませんが、やはり課題は「読み」「書き」になります。担当審査官による筆記テストがありますので、そのテストをクリアできるレベルについては、個別にご依頼者の方の能力に応じて具体的に、当サ-ビス(法務局面接対応、助言)で実例をもとにご依頼者の方が筆記テストをクリアできるようご対応致します。