帰化追完書類
はじめに
帰化申請はあなたの住所を管轄する法務局で受付されたからといって、帰化申請にかかる全ての書類の提出が終わったわけではありません。
つまり、帰化申請当日その時点で帰化申請にかかる書類が全て具備(完全にそろえる事。)したとしても、申請受付後に法務局の担当事務官が帰化申請書をチェックしていく中で添付書類の整合性に疑義(はっきりしない事、疑問に思う事。)が生じたり、欠缺(かけている。)事項や書類が生じたりした場合に、担当事務官が帰化申請者に追加書類や説明を求める場合があります。
では、なぜこのような場合があるかというと、管轄の法務局では帰化申請を受け付ける事務官と、その後に担当する事務官は別々だからです。(ただし、地方法務局の支局のうち年間の申請件数が極端に少ない支局は稀ですが受付とその後担当する事務官が同じ場合がある。)
加えて、受付する担当事務官は時間の制約(1回約平均1時間)がある中で書類のチェックをしますが担当事務官は基本的に局内外の移動がない限り、担当する帰化申請者が帰化あるいは不許可(数か月~数年)になるまで担当する事になり法務省(本省)からの指示によって申請者に対する確認事項、不足又は追加書類の要求が数回に及ぶ事があり(全てが具備した場合を「追完」という。)書類が追完された状態で本格的な帰化審査に入る事になるのです。
したがって、帰化申請後に追加書類を求められるケースと書類について頻繁に追加を求められるものから順に説明していきます。
課税証明/納税証明
管轄法務局での帰化申請の受付がその年の前半つまり、5月末までにされた場合には全国の市区町村はおおよそ6月の第二週を目途に課税証明と納税証明の年度が切り替わります。(全国で早い市区町村は5月前半から逆に遅い市区町村は6月末日というところもある。)
この場合には、帰化申請の受付時(5月後半だった場合。)に追加で提出を求められる場合もあります。又、帰化申請の受付後に必ず審査面接があるのでその予定を担当事務官と決める際に追加を求められる場合があります。
その際に気を付けなければいけないのが、帰化申請時に提出した前年度の源泉徴収票の支払金額と課税証明の給与収入が一致しない場合です。
申請者自身が一致しない場合もありますが、ほとんどの場合、申請者の妻や
生計を一にしている場合の同居者又は家族です。
この場合、何故一致しないかというと課税証明の給与収入は合算金額が市区町村で計上されるので、勤務先やアルバイト先が数社ある場合やスポットのアルバイト(人材派遣など。)などの場合、本人自身がバイト先の数が多くてバイト先を記憶していない場合があります。
そして、とくに気をつけなければいけないのが、バイト先から源泉徴収がもらえない場合。
(1)そのバイト先が潰れた。
(2)大手企業はありえない小規模(ブラック企業などはそもそも管理がずさんなのでいくら担当者に催促してももらえない場合がある。)事業者の場合には源泉徴収がもらえずよくトラブルになるケースがあります。
そして、特に気をつけなければいけないのが、外国人同士の夫婦で帰化申請者の一方が人文知識などの就労資格で、その一方の妻か夫が家族滞在又は留学(原則、就労不可/資格外活動許可を得た場合:週28時間の就労が可能になる。)の在留資格だった場合、週28時間以内の規定を守らず就労した結果、源泉徴収額の金額が過大となり、その源泉徴収を追加書類として法務局に提出した場合、法務局担当者から指摘され、最悪の場合就労先のタイムカードや一年間の給与明細の提出が求められます。
そして、明白に週28時間以上の就労が発覚し悪質だった場合には、入管法(出入国管理法及び難民規定法以下は「入管法」という。)違反となり、当該違反者である同一生計者はもちろんの事、他方である帰化申請者も帰化申請に多大な影響が出る事は間違いありません。
さらに、悪質という観点でいうとその就労先が飲食業で水商売(外人パブやスナック、クラブなど)だった場合、風俗営業等にあたるので、これも明白な入管法違反となるので、この場合の該当者は入管法第70条4項(専従資格外活動者)又は非専従資格外活動者に該当します。
(※この事件は従前実際に当法人であった事案を紹介しています。)
この入管法の罰則により(禁錮以上の刑に処せられた場合。)強制退去事由に該当します。
したがって、帰化申請後においても課税証明の追加提出からこのような事件に発展する事はまれ(めったにない:めずらしい)ですが、帰化申請者にとっては大きな事件に発展する事もありうるので帰化申請者自身はもちろん、同一生計者の就労先には十分な注意が必要です。
源泉徴収票
管轄法務局での帰化申請の受付がその年の後半、つまり7月から12月末(ただし、帰化申請の時期・審査面接の時期にかかわらず帰化の結果が出る前に越年した場合には前年度の収入【源泉徴収票:従業者など】が追加請求される。)までにされた場合、その後翌年の法務局で行われる審査面接時に前年度の収入である源泉徴収票が追加請求されます。
ただし、帰化申請者及び妻あるいは同一生計者である家族又は婚約者などの同居家族が前年度の途中で退職した場合には、源泉徴収の生産がされていないため所轄の税務署(市区町村ではない。)に対し確定申告を行い源泉税の清算を行なう事になります。
又、申請者の扶養に入れていた同居者(夫及び妻又は子供など)が帰化申請にかかる期間に収入が扶養の範囲(年/103万円以内:令和5年現在)を超えた場合には、該当する同居者を扶養から外し税務署で修正申告を行い再度課税・納税証明を取得し管轄の法務局に提出する必要があります。
運転記録証明書
運転記録証明書については、帰化申請時に運転免許のある方は提出していますが、基本的には2カ月以内の交通記録証明を求められるため、帰化申請後もある一定期間ごとに提出を求められる場合があります。
とくに令和4年7月以降は、法務省民事局の帰化審査要綱が改定され帰化に関する基準が全体的に厳しくなりました。当然素行要件にかかわる交通違反の基準も一層厳しくなっています。したがって、帰化申請時点で違反回数の可否に拘わらず、帰化申請後も運転交通記録証明書の提出を複数回求められる場合があります。
そして、申請後に
- 違反回数の増加(駐車違反・一時停止など軽微違反)
- 速度違反(一定速度以上の超過)
- 交通違反をし、反則金を期限内に納入しない。
等を犯した場合、せっかく帰化申請が受け付けられても不許可になる可能性が高くなるので注意が必要です。
住所変更
申請後に、自宅の購入があった場合、又は仕事の関係で会社から転勤等の辞令により自宅を引越をする場合があります。
この場合、引っ越し先が同じ管轄の場合なら問題はありませんが、例えば管轄以外の地域に引越しを行う場合には、帰化申請した法務局から引越をした地域の管轄する法務局に申請書類が移送され申請者自身も引越先を管轄する法務局で手続きが終わる迄、当該法務局であらためて審査面接等の手順を行うことになります。
したがって、同じ管轄に移転した場合と別管轄(主に都道府県外)に移転した場合には法務局に追加する書類も当然違ってくるので下記のとおり記載します。
例(1) 同管轄法務局の場合
東京法務局 (東京23区内及び東京管内の大島町他の離島)
従前住所 (港区 芝3丁目3番○○○○○○○)
↓
移転住所 (練馬区豊王北1丁目1番○○○○○○)
✭追加書類
イ.住所変更届 法務大臣宛
旧住所
新住所
電話番号
変更の事由
ロ.住民票
ハ.除票 (従前住所:家族全員分)本体・附属ごと各1部
ニ.在留カード (在留カード裏面に移転先住所記載)
※家族全員分
ホ.運転免許証 (在留カード裏面に移転先住所記載)
※家族全員分
へ.地図 (最寄り駅からの交通手段及び徒歩を含む自宅までの距離計測と時間を記載)
例(2) 別管轄法務局の場合(申請書類の移送)
東京法務局(千代田区神田鍛冶町2丁目2番○○○○○○○)
↓
奈良地方法務局(奈良県奈良市雑司町○○○○○○○)
✭追加書類
イ.申請書(表題)部分差し替え※訂正署名の場合もある。
ロ.住民票
ハ.除票(従前住所:家族全員分)本体・附属ごと各1部づつ
ニ.在留カード (在留カード裏面に移転先住所記載)
※家族全員分
ホ.運転免許証 (在留カード裏面に移転先住所記載)
※家族全員分
へ.地図 (最寄り駅からの交通手段及び徒歩を含む自宅までの距離計測と時間を記載)
その他期間や期限が超過した書類も管轄する担当事務官の指示により差し替えの手続きを行なう事になります。
結婚・離婚
帰化申請後に結婚及び離婚が生じた場合についてどの様な手続きが必要か説明します。先ず、結婚については、
1.一方が日本人の場合(*婚姻のみ)
申請人の夫または妻が日本国民の場合には、最寄りの市区町村に婚姻又は離婚届を提出し、当該市区町村の担当者から婚姻又は離婚の受理証明書を発行してもらい、後日市区町村の戸籍課から日本人の戸籍謄本に婚姻又は離婚の記載がされます。したがって、法務局に追加する書類としては、
イ.戸籍謄本
ロ.住民票
ハ.親族概要(申請人の親族及び新たな2親等内の親族)*
続 柄 (妻)又は(夫)など
氏 名
年 齢
職 業
住 所
交際状況等の有無
ニ.賃貸契約書(新たに賃貸した場合)
ホ.登記簿謄本(新たに土地・建物、区分所有権を購入した場合)
ヘ.地 図(最寄り駅から交通手段及び徒歩を含む自宅までの距離計測と時間を記載)
2.相方が外国人同士の場合(*婚姻のみ)
申請人の妻と夫がともに外国人の場合には、様々な方法による事になります。例えば、
イ.中国人と中国人の場合
ロ.中国人と韓国人の場合
ハ.中国人のタイ人の場合
ニ.ネパール人とミャンマー人の場合
ホ.インド人とスリランカ人の場合
等、婚姻手続きが当該手続きに伴う結婚具備証明書等当該本国によって多種多様になりますので、本コンテンツでは婚姻のプロセスについての説明は省きます。
したがって本コンテンツでは外国人同士(同・異国)の婚姻が成立し、且つ日本国内での市区町村の登録手続きが完了した以後当該法務局に申請する書類を説明します。
ヘ.結婚(事項証明)
ト.住民票
チ.親族概要(申請人の親族及び新たな2親等内の親族)*
続 柄 (妻)又は(夫)など
氏 名
年 齢
職 業
住 所
交際状況等の有無
リ.賃貸契約書(新たに賃貸した場合)
ヌ.登記簿謄本(新たに土地・建物、区分所有権を購入した場合)
ル.地 図(最寄り駅から交通手段及び徒歩を含む自宅までの距離計測と時間を記載)
出 生
帰化申請後に申請人本人又は申請人の妻が新たに子供を出産した場合にどのような手続きが必要かを説明します。
1.一方が日本人の場合
申請人本人又は申請人の妻が帰化申請後に新たに子供を出産した場合には、子供が出生した日から2週間以内に先ず自身が居住している最寄りの市区町村に出生届を提出します。
その後に、当該届出を受理した市区町村が新たに出生した子供の氏名を一方が日本人の当該市区町村に登録してある住民票及び戸籍(※戸籍が別管轄にある場合には当該市区町村に当該情報を移送する。)に登録する事になります。したがって、法務局に追加提出する書類としては、
(イ)戸籍謄本
(ロ)住民票
(ハ)親族概要
続 柄 (長女)(二女)など
氏 名 (新たに出生した子供の追加記載)
年 齢 (生年月日)
住 所
2.双方が外国人の場合
申請人本人または申請人の妻が帰化申請後に新たに子供を出産した場合は子供が出生した日から2週間以内に先ず自身が居住している最寄りの市区町村に出生届を提出します。
その後に、当該届出を受理した市区町村が新たに出生した子供の氏名を住民票に登録する事になります。したがって、法務局に追加提出する書類としては、
(イ)出 生 届
(ロ)住民票
(ハ)親族概要
続 柄 (長女)(二女)など
氏 名 (新たに出生した子供の追加記載)
年 齢 (生年月日)
住 所
転 職
転職した場合の帰化手続きは、主に健康保険、年金、雇用保険、税金関連の手続き後の追加書類の提出が挙げられます。そして、これらの手続きは、転職先が決まっている場合と、そうでない場合で異なります。又、就職先の転職の期間が数日内であれば許容範囲にはなりますが、1週間以上となると、その期間は無職となるのでもっとも注意が必要です。
すなわち、特に帰化申請中の転職は転職先を必ず確定させたうえで現在の就職先を退職しないと帰化審査には大きな影響が出る事を踏まえ慎重に転職を考えた方が賢明です。
それでは帰化申請中の転職が円滑に進められるようにそれぞれ具体的に説明していきます。
1. 健康保険と年金の切り替え:
・転職先が決まっている場合
新しい職場に加入する健康保険、年金の手続きは、原則として新しい会社が行います。
・転職先が決まっていない場合
国民健康保険や国民年金への加入手続きを、自身で行う必要があります。
2. 雇用保険:
・転職先が決まっている場合前職の雇用保険の被保険者証を、転職先の会社に提出します。
・転職先が決まっていない場合雇用保険の失業保険の手続きをする必要があります。
3. 税金:
・住民税:
転職先が決まっている場合、前職の会社で「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を発行してもらい、転職先の会社を通じて市区町村に提出することで、特別徴収で引き続き納付ができます。
・所得税
転職先の会社で年末調整を受けられる場合は、確定申告は不要です。ただし、転職先で年末調整を受けられない場合や、年内に再就職しない場合は、確定申告が必要になります。
4. その他の手続き:
・前職の源泉徴収票:
転職先の会社での年末調整のために、前職の源泉徴収票が必要になります。
・年金手帳:
転職先の会社に提出したり、自身の年金記録として保管する必要があります。
・雇用保険被保険者証:
転職先の会社に提出したり、自身の雇用保険の記録として保管する必要があります。
・離職票:
転職先が決まっていない場合や、失業保険を受給する際に、ハローワークに提出します。
5. 転職先への提出書類:
・年金手帳、雇用保険被保険者証、源泉徴収票:前職から受け取ります。
・扶養控除等(異動)申告書、健康保険被扶養者(異動)届、給与振込先届出書:転職先で書類を受け取ります。
その他:必要に応じて、健康診断書、免許・資格証明書、卒業証明書などを提出する場合があります。
6. 転職先が決まっていない場合の手続き:
・国民健康保険への加入手続き:各市区町村の保険担当窓口で行います。
・国民年金への加入手続き:各市区町村の年金担当窓口で行います。
・失業保険の手続き:ハローワークで行います。
7. 注意点:
転職先への入社手続きまでに、必要書類を準備しておくことが大切です。
書類の提出期限を守り、必要な手続きをスムーズに行いましょう。
わからないことは、転職先の会社や、ハローワークなどに速やかに問い合わせるようにしましょう。
最後に、転職における法務局の追加提出書類は、就職先(との)
(1)雇用契約書
(2)健康保険証
(3)給与明細
(4)転職先の名刺・地図
(5)上司の氏名・連絡先
(6)源泉徴収票(審査中年度を跨いだ場合。)
(7)就労資格証明書
(転職する前の法人と転職先法人の業態が全く違う場合。)
(そもそも、当該転職先が技・人・国に該当するか否か疑義が生じる場合。)
が挙げられます。
あとがき
帰化申請の審査期間は最低でも1年はかかります。ましてや会社を経営しており、加えてその経営する会社の売り上げが低かったり、赤字だった場合は審査期間も2年ないし3年になる場合もあります。この場合、申請者である申請人と経営する会社は不可分一体なので売り上げの推移や赤字だった場合黒字化するまで経過観察されるので、帰化申請中数年にわたり決算書の提出や法人及び個人(同居家族分)の納課税証明の提出が求められます。
そして、上掲でも説示しましたが個人について帰化申請中はできるだけ転職しない方が良いのは言うまでもありません。
又、帰化申請中でもどうしても転職したいケースとして当所で帰化申請中に良くある申請者から受ける相談ケースが、
1.現在勤めている会社内で悪質なパワハラを受けている場合。
2.転職した場合確実に年収が大幅に上がる場合。
などがあります。
とにかく帰化申請中は短絡的に転職した場合、帰化申請の結果は消極事由に働く場合が多々あります。上掲に掲げたその他の事案ついてもケースバイケースなので慎重に考える必要があります。
帰化は人生を大きく左右する手続きです。一人で悩まず専門家に早く相談し最善の選択をする事をお勧めします。